読み上げ CV:西原翔吾
再生
私は賈詡、9季では部隊に参入していないが、相変わらずうちのあるじのお気に入りである。
うちのあるじ曰く、季に一つは印象深い思い出があるものらしい。
「その中でも2季は強烈なイベントが多かった」
とあるじは言った。
昔語のように語っていた思い出は数多くあるが、その中の一つを今回は紹介したい。
2季は、大同盟対複数中同盟連合の戦いになった。
大同盟側は前評判から猛者が大勢集まっており、大層強烈な集まりだと聞いていた。
前評判については概ね正しいものだった。
恐らく、一対一ではほぼ間違いなく勝ち目は無かっただろうと今でも思う。
ただ、数はこちらが多かったし、なかには大同盟の猛者に匹敵する程の戦闘員もいた。全員がそうではないが、それでも数の力は偉大だ。あるじは官員の立場であれこれと戦場を走り回っていたし、私もそれに付き従った。
一気に広げた包囲網を確実に狭めるように、連合は戦地を広げ、大同盟も流石にじわじわと勢力を減らしていった。
戦争の終盤には、大同盟の勢力は司隷の洛陽周辺に盟員の大半の主城を固めていた。
地図上で洛陽に移動すると、炎上するかのように真っ赤な敵勢力の色と主城で周囲が埋め尽くされていた。
「強烈すぎて画面が明滅するかと思った」と、あるじは言っていた。
司隷に入るには、潼関、虎牢関、延津のどれかを攻城しなければならない。
当時の連合は三つの同盟の集まりであり、それぞれがいずれかを担当した。
あるじの同盟が担当したのは延津だった。
…延津を攻略する前に、潼関でも一騒動あったのだが、あるじの所属していた同盟の担当ではないため、細部については語るまい。
あるじの所属する同盟は、良くも悪くも真っ正面からぶつかる同盟であった。正々堂々していると言えばそうだが、頭脳戦にあまり強くないと言えばそれもその通りだった。
ある日、同盟は延津を攻略しようとした。強力な守軍を倒し、攻城値を減らす。
青の矢印は真っ直ぐ延津に向かった。
私も当然、あるじの指揮を受けて守軍を倒しに向かっていた。
当時、延津はまだどの同盟も取得していない状態であった。
私とあるじの頭には懸念がひとつあった。
あるじは私に向かって口を開いた。
「…賈詡、どう思う?」
「…反撃の機会を伺っているかと」
あるじがわざわざ口を開いたのは悪寒があったのか、それともそう言葉に出したが故に言霊が実現されたのか。
概念としての存在である私には、言霊というものは理解しかねるものである。
そして、私達の予想は残念ながら的中した。
攻城値が僅かになった延津に、一気に赤の矢印が発進されたのだ。
あるじは思わず叫んでいた。
「来た…!」
こうなれば最早運の勝負に等しくなる。
最後の着弾がどちらになるのか。
勝負は残酷だ。守軍を倒してぼろぼろになっていようが、それは勝ちを保証してくれない。
疲労と闘う私の耳に、延津が相手方の同盟のものになったという伝達が聞こえてきた。
延津はものの見事に敵の同盟に仕留められた。
同盟の皆が悲鳴を上げるなら、ぼろぼろの自分の部隊に向かい、あるじは防衛の指揮を間髪入れず執り始める。
その横顔は、「してやられた」という色で溢れていた。
結局延津を攻略出来たのはそれから数日後。
あまりに鮮やかな勝負だったので、あの攻城は未だに時々、夢であるじを悩ませるらしい。
因みに残念ながら、今でもうちのあるじは攻城の計算はあまり得意ではない。
「帰属の所属位置を全部管理するくらいの地道な作業の方が向いていると思ってる」
とのことである。
「賈詡、もう少し頑張れよって思ったでしょう」
「…その通り」
地味な作業は嫌がらずにやるあるじなので、他所の城主殿は、見かけたら上手く使ってやって頂ければ幸いである。