読み上げ CV:西原翔吾

再生

光が当たらぬ戦争

うんも 2021-05-11

 戦争とは多種多様な原因が元で成り立っている。

 その中でも1番多い原因は、13州府を巡って起きるのではないだろうか?

 

 確かに13州府、洛陽を巡っての戦争はそのサーバーでのメイン戦争と言えるだろう。

 

 しかし、戦争はそれだけではない。

 

 今回は、そんな大規模戦争ではなく、当事者のみが知り得る戦争を紹介しよう。

 

 「さて、シーズン2も終わり、いよいよシーズン3か・・・・・・今までの経験を活かして誰よりも早く周りの土地を取ろうではないか」

 

 うんもは、メンテナンス終了と同時にログインするため、時計の針を見つめ静かにその時を待っていた。

 

 「よし! 直ぐにログインだ!! 同盟メンバーと決めていた涼州を選んでっと・・・・・・」

 

 うんもが所属していた同盟は20人にも満たない極小数同盟だ。少数同盟だからこそ、同盟を立ち上げた際に全員を直ぐに回収する事が出来た。

 

 「これで全員回収出来たか?」

 

 盟主の叫びに盟員達は各々メンバー確認を行った。

 

 「あれ? 何か少なくない?」

 

 「いや、全員居るぜ!!」

 

 「ん? やっぱり1人少ないな・・・・・・」

 

 「誰がまだかわかる人いるか??」

 

 「「「・・・・・・」」」

 

 「・・・・・・太郎・・・・・・」

 

 「「「太郎だ!!」」」

 

 太郎は勿論仮名だ。

 ほとんどの人が太郎とシーズン1から一緒にプレイしているので分かっているが、少し天然が入っている同盟のマスコット的存在だ。

 太郎自信、それを不快と思わず、どちらかと言うと自分からそのキャラを作っているのかも知れない。

 しかしそれは、太郎自信しかしらない。

 

 「また太郎か!! メールも帰って来ないし何してるんだ? 誰か太郎にリアルで連絡取れる人いるか?」

 

 盟主の問いかけに盟員の1人が手を挙げた。

 

 「私 、リアルフレンドだから1回聞いてみるね」

 

 「おお! 頼みます。間違えて別の州を選択していなければいいが・・・・・・取り敢えず他の人は各自戦力アップを図るように」

 

 「「「了解!!」」」

 

 そして数時間後、太郎とリアルで連絡を取った盟員から連絡が来た。

 

 「太郎はリアルが忙しくて今日はログイン出来ないって。それと伝言。土地取得手伝ってね(´>ω∂`)だって」

 

 「リアルが忙しいなら仕方ないか。みんな! 太郎が来た時手伝える様に頑張ろう!!」

 

 そして、太郎が来たのはシーズン開始から遅れること24時間後だった。

 

 涼州別同盟所属プレイヤー side

 

 「うわ・・・・・・最悪だ・・・・・・シーズン開始直後にログイン出来たが、北と東が河川に囲まれてる・・・・・・土地が取れるのは南と西側だけか・・・・・・でも、周りにプレイヤーが居ないのが唯一の救いだな」

 

 この人、前シーズンで洛陽の陥落に成功した同盟所属のプレイヤーだ。自分の本城ポップ位置に嘆いていた。

 

 「まぁーいつも通りやれば問題ないだろう。初日に土地3、4取得。3日目に土地5で最速だろう。大丈夫、いつも通りやろう。」

 

 確かにシーズン2、シーズン3ではこのプレイヤーが言った通りそれが最速だろう。だが、このプレイヤーはまだ気付いて居なかった。近くにイレギュラーがポップする事に・・・・・・

 

 次の日

 

 「さて、今日も土地5取得を目指して頑張るか!」

 

 自分で立てたプランを実行するべく、この男は早々にゲームにログインした。

 しかしこの男のプランは着実にその軸を蝕まれていった。

 

 「誰だこの城。太郎? 前シーズンでは見ない名前だな。別サーバーのプレイヤーだったのだろう。でも1日遅れてのログインなら大したことないだろう。回りの土地は頂くとしよう」

 

 こうして、太郎の事をあまり警戒すること無く、この男は自分のプランを進める事にした。

 

 「っと、メールか。どれどれ」

 

 《同盟の受け入れ準備が出来ました。他の盟員も順次回収していくのですが、同盟レベル上げれそうですか?》

 

 同盟レベルをあげるにはなるべくアクティブな盟員、土地攻略が早い盟員を先に加入させるのは定石だ。

 この盟主も定石に乗っ取り、盟員に確認しているのだろう。

 

 「周りはこの太郎だけだ。それに1日遅れと来ている。大した問題ではないな」

 

 男は盟主のメールに2つ返事でおっけーを出した。

 

 「さて、これから忙しくなるぞ!!」

 

 男は同盟に加入する事により、その日は幕を閉じた。

 

 太郎所属同盟side

 

 新シーズンが始まり3日目、ほとんどの盟員が土地5取得に成功していた。

 

 「よし! 土地5取れました!!」

 

 「「「おめでとーー」」」

 

 「私は、徴兵終わったら取れそうです(ง •̀_•́)ง」

 

 「「「がんばれーー」」」

 

 「緊急事態発生! 繰り返す。緊急事態発生!」

 

 太郎からの同盟チャットに盟員達は固唾を飲みながら次のチャットを待った。

 

 「隣人が土地5を取得。僕の分が無くなる模様。至急援軍を!!」

 

 太郎のチャットに盟主が少し考えた後、盟員達に指示を出した。

 

 「まぁーーどんまい。っと言いたい所だけど、チームワークが大事だからな。よし! 土地5を取った者は太郎の援軍に! まだの人は引き続き土地5攻略に務めてくれ!! では、出陣!!」

 

 「「「おーーーー!!」」」

 

 盟主の指揮通り各自動き出した。

 

 数時間後、太郎の本城付近に10にも上る要塞が建ち始めた。

 

 「これより、補給経路奪還作戦を開始する! 相手は北東を河川により退路を塞がれている。南西より順次敵の進行を食い止めろ! 間違っても攻撃はするなよ」

 

 「「「了解!!」」」

 

 序盤の土地枠は非常に重要だ。

 施設を上げるために皆がギリギリまで使い込んでいる。

 その中での経路の封鎖。1人では到底なしえない。

 

 「私は南側3枠閉鎖出来ます」

 

 「自分は南側4枠」

 

 「おけ! 俺は北側2枠」

 

 各々自分の行動を明確にし、迅速に土地封鎖を開始した。

 

 涼州別同盟所属プレイヤー side

 

 「よし、予定通り3日目で土地5が取れたぞ! 申し訳ないが太郎さん、あなたの城付近も頂きます。呪うなら遅れてきた自分を呪ってください」

 

 無事、プラン通りに事が進んでいたが、その安堵も一瞬、この男はある異変に気付いた。

 

 「なんだ!? なんであんなに要塞が!?」

 

 太郎が自分で城回りの土地を取っていたと思い込んでいた男は、自分の確認の甘さを悔やんだ。

 

 「くそ!! なんで確認しなかった! 太郎は同盟に入っていたのは知っていただろ。序盤だから誰も来ないとなぜ思ったんだ!」

 

 男は自分の甘さを悔やんだが、時既に遅し、次の自分の一手を模索するのであった。

 

 「こいつらは何がしたいんだ? 戦争か!? こんな序盤に? 俺の同盟の旗が見えていないわけないだろう。あっちは弱小同盟。どう足掻いたって勝ち目はない。ならどうして・・・・・・」

 

 男が数え切れないもしもを考えている時、場面が動いた。

 

 「なっ!? こいつら俺の進行を防ぐつもりか!! まずい! 非常にまずい。こっちは北東を河川に囲われてるんだぞ。そんなことしたら動けないだろ」

 

 男は必死に自分の退路を作るべく馬を走らせた。

 しかし数が違いすぎる。所詮は1人行動。数の力には敵わない。

 

 「完全にやられた・・・・・・相手の土地を捲るか? いやダメだ。そんな事したら大規模な戦争の発展してしまう。そんな事盟主は望んで居ないだろう。下手をしたら勝手な行動をした。っと言う理由で除名されかねない。除名されたら一気に攻めてくるだろう」

 

 男は退路を完全に断たれて意気消沈するのであった。

 

 太郎所属同盟side

 

 「これより作戦終了!! お疲れ様でした」

 

 盟主の作戦終了合図で、盟員達は部隊を城に下がらせた。勿論土地は取得状態にして。

 

 「みんなありがとう┏● 土地が取られずに済みました」

 

 「大丈夫! 今度太郎さんに手伝って貰うことあるから( ・∀・)b」

 

 「(º﹃º)」

 

 皆が勝利を喜んでいる時、太郎に1通のメールが届いた。

 

 《すみません。土地空けてもらって良いですか?》

 

 メールの送り主は勿論、太郎城付近を攻めようとしていた男だ。

 太郎はこのメールに口角を吊り上げながら返信した。

 

 《南部分ならいいですよ! あっ!! でも僕の周辺の土地を取らないことを約束するならですよ》

 

 太郎はそれだけを言いゲームを閉じた。

 

 涼州別同盟所属プレイヤー side

 

 「くそ! くそ! くそ!!!! 許さない。戦場で見かけたら絶対に潰してやる! 」

 

 男は怒りに任せ机を何度も叩いたからなのか、手には血が滲んでいた。

 

 「この際、南でも西でもどっちでもいい。土地5を取れるだけの戦力は整っているのだ。少し足を伸ばすしかないだろう・・・・・・」

 

 男の怒りは、心の奥底でフツフツと煮えたぎっていた。

 

 今はまだ大きな戦争に発展しなかったがその内、このサーバーでも戦争が起きるだろう。

 その時、怒りと言う名の原動力を持ったこの男を止めることが出来るのだろうか?

 それは、また別の話。

 

 この様に、戦争とは決して同盟同士で争うだけが戦争では無い。

 個人間で様々な戦争が起きているのだ。

 

 もしかしたら、あなたのサーバーでも、見えない戦争が起きているのかもしれない。

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