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風雲物語

翡翠@16(@tomochin_767)

※武将視点を捏造したような物語のため、ルールと違うようでしたらすみません…

「ああ、やっと来てくれた!」

貴女の城に召募で呼ばれた時の第一声は、それだった。

私は賈詡。この大三国志の世界においては群武将である。

同じ姿の武将は何人もいる。だが、城のあるじにとってはその武将は一人しかいない。

私は、「貴女の」賈詡だ。

「ずっと待ってたんです、あなたが来てくれるのを」

ーー城のあるじは女性だった。

「あなたの姿を召募一覧で見てから、ずっと」

笑うその人の名前を、私は知らない。武将はそういうものだ。

一季も中盤を超え、終わりがけの頃。

 

元々別のゲームから三国志に興味を持ったというにしては、私のあるじは随分大三国志に対して勤勉だった。

目が霞むとぼやきながら画面に向かい合い、私のいる部隊や他の部隊に出撃を命じる。

激しい戦争だった。一季、あるじの所属する同盟は最後の戦争に負け、洛陽を落とす事は叶わなかった。

 

「…来季は、劉備の代わりに群貂蟬を入れようかしら、あなたの部隊」

右も左も分からなかったあるじも、一季の終わりには戦法の規則性も理解したらしい。

張寧と劉備と組んでいた私を、群貂蟬と共に組むことにしたようだ。

以来、七季まで私は同じ編成で起用される事になった。

 

二季目は洛陽を取った。三季目のあるじは随分気が短く、元々所属していた同盟を飛び出して二季目の君主の元へ向かった。全ての土地を破棄してまで。

同じ城にいる武将達と、何とも破天荒なあるじだと溜息混じりに話したのは、一年近くも昔の話だ。

四季目、五季目は似たような状況で、大きな同盟二つに挟まれて二進も三進も行かなかった。

 

「あそこに行くくらいなら一人で留守番する!」

…特に五季目は、随分早くに負けてしまったから、負けた相手先の同盟に移籍する事になった。あるじは荒れていた。

目を真っ赤にして、年甲斐もなく泣いていた私達のあるじを説得したのは、所属していた同盟の君主。

二季目から私のあるじが仕えている君主だ。

 

…よくよく考えれば、私のあるじは泣いてばかりいた気がする。

六季目、董卓勢力に行き損ねたあるじは持ち前の迷走具合を発揮して、思い切り君主に叱責された。群雄内で所属した同盟で揉めて独立し、連れて行った仲間を攻撃されては泣いていた。

「攻撃するなら私を攻撃すれば良い、他ばかり狙って、何なの」

画面越しの貴女は泣いてばかりだ。

 

長年やっていれば、色々なあるじがいなくなっていく。私のあるじの友人も一人減り二人減りーーその理由はそれぞれだが、精神的な負担が大きく辞めていくあるじもいる。

帰ってこないあるじを待つ武将達は、皆一様に哀しい顔をしている。

 

それでも私のあるじは、辞めなかった。

時に傷付き憤慨し悲嘆に暮れ、それでも尚辞めなかった。

 

ある時、私はあるじに問うた。不遇の時代も多いのに何故辞めないのか。

あるじは答えた。

「私は、君主を支えたい、それだけ」

長く仕える君主がいる。

変わり者の君主だけど、何故か分からないけれど人を惹きつける何かがある人だと、あるじは言った。

 

(であれば、我々は貴女を支えよう)

 

召募で呼んだ時に喜んでくれた貴女の顔を、ここにいる武将達は誰一人として忘れてはいない。

 

八季が始まった。

貴女は、どんな戦術を描くのか。

私は、私達はーー貴女の傍にいる。

貴女が戦場を走れと言う限り、その命に背く事はない。

それが、この大三国志における我々の役割だから。

 

「ーーー」

 

ゲームの中での貴女の名前を、我々が呼ぶ事はない。本名も呼ぶ事はない。

でも忘れないで欲しい。

地の果てまでも、私達武将はあるじと共にある。

その先にあるのが栄光だろうが、地獄だろうが、必ず、貴女を見捨てる事はない。

 

七季まで私を編成していた貴女も、今季は悩んでいると聞いた。当然と言えば当然だ。

今の主流部隊に私の戦法は相性が悪い。

ーー編成から外されても構わない。

貴女の武将達は、貴女に愛されている事を知っている。

私は賈詡、例え編成されなくなったとしても、貴女が喜んでくれた最初の日の事は忘れない。

いつか、群ではなく魏の所属となったらーーまた、起用してくれる日を、待っている。