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風雲物語〜この世界で私は〜

おさむ(@ojihenomichi)

風雲物語〜この世界で私は〜

 

この世界の私は18区に生まれた。もっと新しい区があったが、どんどん新しい区が増えるようなので、練習のつもりでエースナンバーの18を選んだ。

この世界の事は何も分からない。右も左も分からないこの世界で、任務をこなしながらハイハイし始めた。

ふとチャットの存在に気づき、何となく挨拶をしてみた。すると直ぐに丁寧な返事が来た。陸上選手の様な彼は、つかまり立ちの私に「一緒に遊ぼう」と手を差し伸べてくれた。文字の向こう側に人を感じ、怖くなった私は練習のつもりだからと断った。私が走れるようになった頃には、賑やかだったチャットは動かなくなっており、やがて消えた。

寂しくなった私は、丁度オープンした24区に行くことにした。この24区が、私のこの世界の、本当の始まりとなる。

24区の荊州に生まれた私は、感じていた寂しさから同盟に入る事にした。いくつか同盟があったが、蒼と紅という2つの同盟が圧倒的な勢力を誇っていた。その時1番人数の多かった紅同盟に申請すると、すんなり入る事が出来た。

初めての同盟に緊張する私に、盟主は手取り足取りこの世界の事を教えてくれた。同盟はこの世界に点在する城を奪い合い、最終的にこの世界の中心にある洛陽を手にする事が目標だと知った。

同盟には、右も左も分からない、まるで18区の私のような人が沢山居た。走り方を知っていた私は、彼らに歩き方を教えながら、点在する城に向かって走った。

初めての同盟で気付いた事。それはこの世界の人々はとても好戦的であるという事だ。よりレベルの高い土地を取る事に固執し、他人を目の敵にする人が沢山いた。

その傾向が特に強いのが盟主だった。盟主からの司令により、盟員は城に向かって走った。時には他の同盟が先に辿り着いたり、城を囲っている事もあった。先に辿り着いたのはどっちだ、隣接地を半分寄越せ、城を多く確保し過ぎだ、とこの頃から当初感じた紳士な盟主の影は薄くなっていった。

暫くして、蒼同盟が日同盟という第三勢力を吸収した。これにより均衡は崩れ、蒼が優勢となった。序列では蒼がこの世界の上位に位置し、個人としても蒼の盟員は上位に沢山いた。私は蒼が紅より大きく、そして蒼の盟員達が桁違いに強い事に気付いていた。

この頃、盟主は他同盟との外交で忙しくなり、盟主一人で切り盛りしていた同盟に官員が数人抜擢される事になった。私は働きとチャットでの賑やかさから指揮官に任命された。外交は盟主一人で行う為、副盟主は任命されなかった。私達官員の仕事は、盟員に走り方を教えたり、他同盟との問題を整理し、盟主に引き継ぐ事だった。この時までは、赤子同然の私は、何一つ疑っていなかった。

数日盟主が静かな日が続いたある日。幹部会にて、蒼から紅を吸収したいとの連絡があった事と、それを断り戦争をするという意向を告げられた。

この頃には力の差は歴然であり、紅から蒼に移籍する者も出ていた。私は戦争を避けたいと考えた。蒼は紅の全盟員を吸収してくれるのだろうか?それならば、今後の他州との戦争に備えて、蒼と共に戦う事が、紅にとって最善の道なのではないか?

盟主は言った。それはないだろう、上位陣のみ吸収し、他は見捨てられるだろう。先日吸収された日同盟に数人残っている事が証拠だ、と。

私は、そんな非道な話があるだろうか?と盟主の言い分を疑った。しかし、他の官員や盟員は、蒼は酷いやつらだ!戦争だ!と殺気立っていた。しかし、盟主はそれを宥めた。蒼に勝つ為に仲間を募っているから、少し待ってくれと言った。

盟主曰く、仲間は既に100人を超え、300人規模で蒼に反旗を翻す作戦を立てているらしい。私は更に盟主への疑いを強めた。盟主に真意を問うも、情報漏洩を理由に断られた。

悶々とした日々を送る中、とうとう蒼との戦争が始まった。呆気なく蹂躙されていく仲間達の叫びにも、盟主は仲間がいるから待ってくれと言うばかり。結局仲間は現れず、弱い私達は盟主を守ることも出来ず、全盟員が陥落した。

それでも盟主は、蒼に勝つ為に作戦を提案し、盟員はそれを実行していった。私も盟員を助けて走り回り、その盟員達と共に更に走り回った。

そして、再度蒼に反旗を翻す時が来た。が、仲間は来ず、あっさり負けた。この時には、多くの盟員がこの世界から去っていた。その時、盟主から決定的な発言が出た。この世界では勝てないから、みんなで他の世界に行かないか?と。この一言により、私の紅同盟に対する気持ちは途切れてしまった。

私は盟主に気持ちをぶつけ、紅同盟を飛び出した。私が脱退した事により、同盟内には大きな混乱が起きた様で、盟員達から多くの手紙を受け取った。新たな同盟を作って欲しい、蒼を倒そう、私達はどうすればいい?等の手紙に、私は出来る限りの対応をした。腰抜けと罵られる事もあった。私の気持ちが届いたのかは分からないし、私が上手く気持ちを伝えられたのかどうかも分からない。

今後どうするか迷った挙句、私はこの世界をより楽しむ為に蒼へ行く事にした。最初は紅の指揮官という立場もあり疑われたが、事の顛末と気持ちを伝えると受け入れて貰えた。

蒼と紅には同盟の質に雲泥の差があった。こんな機能があったのか!こんな考え方があるのか!と発見の連続だった。

そしてその中で、紅盟主の発言のほとんどが偽りであった事も知った。蒼は散り散りになった紅の盟員を救おうとしてくれていた。不思議と紅盟主への怒りは感じなかった。もうどうでもよかったのかもしれないが、嫌いになれなかった。

私は、盟員を導ける立場にあったのに、何もせず飛び出した事を後悔した。共にこの世界を楽しんだ、100人以上いた紅の盟員の半数以上は、既にこの世界を去ってしまっていた。

その後蒼は、紅同盟の残党を抱き込んだ同盟と他州の同盟に、内と外から攻められ崩壊寸前まで追い込まれた。しかし、本物の外交と戦術、敵対していた当時恐れていた個人の武力により見事形勢を逆転し勝利した。最後は、蒼は洛陽への権利を放棄し、助けてくれた同盟に洛陽報酬を譲った。私達蒼の盟員は、助けてくれた同盟へ移籍する事になり、洛陽報酬を得る事が出来た。

その後も洛陽を目指す事を第一目標に、蒼隊という分隊として現在に至り、多くの仲間と出会い、別れ、暴れ回っている。

私個人としても、師匠や先生と呼べる人や、冗談を言い合える仲間との出会いと別れを経験した。この世界に来たからこその経験を経て、私は今もこの世界を走り回っている。

しかし今、この世界で私は、本当は何がしたいのだろうか。

辞めようと思っても、ついつい手を伸ばしてしまうのがこの世界である。いつでも、共に楽しい時を過ごした仲間達がいる世界だから。

そして私にとっては、多くの盟員を置いて飛び出し、結果多くの盟員がこの世界を去ってしまう原因を作った、嫌な思い出のある世界でもある。

私も手が遠のく時期があってが、いつの間にか戻ってきてしまった。それは、仲間達とのチャットが楽しいから、なのだろうか。

この頃思う。私の至らなさ故に去っていった、紅同盟の彼らへの罪滅ぼしをしたいのかもしれないと。

この世界は私にとって、目に見えない仲間達と過ごせる楽しい世界であると同時に、もう会う事の出来ない彼らへの贖罪が出来る唯一の世界である。

この世界で彼らと走り回れたのは、本当に短い期間だった。だからこそ私は、今を共にする仲間達ともっともっと走り回っていきたい。もう二度と同じ様な事は起こさない。起こさせない。

今の私なら、彼らを楽しいこの世界へ導く事が出来るのだろうか。