code

スキャンしてゲームをダウンロード

荊州に産まれた暴君盟主

うんも( @unmoiko)

およそ30000坪の大地で繰り広げられる戦争。

この乱世で天下統一を成し遂げようと、荊州の大地にこの暴君は生まれた。

周辺の大地を狩り尽くし、狩る大地が無くなれば同盟に誘い、辺境の地へ足を伸ばした。

そこでもまた、大地を狩り尽くし、着実に勢力を伸ばしていった。

そんな暴君とは露しらず、荊州のプレイヤー達は同盟勢力値につられ、続々と同盟に加入し、全州のトップ同盟に成り上がった。

『盟員全員に連絡! 6時間後、午後9時に城砦レベル5を攻城するため至急集合するように!!』

「盟主殿、流石に6時間後は無理があるのでは? 盟員の中には新規プレイヤーや、資源が枯渇し徴兵できない盟員もいます」

盟主の参謀、副盟主の忠告には意を返さず、盟主の口からは驚きの言葉が返ってきた。

「なーに、他州のプレイヤーもこの同盟に入りたいと懇願するほどではないか。盟員枠にも限りがある。着いてこられない奴は斬れば良いだけのこと。それより攻城だ! お前も早く準備しろ」

それだけ言い、盟主は城砦へ馬を走らせた。

「入る同盟を間違えたか……」

副盟主は言われた通り城砦へ馬を走らせると同時に、他州を納める盟主達全員にメールを流した。

「やはり城砦レベル5ごときこの俺の同盟では余裕だったではないか。まだまだ余力が見られたし明日朝にでもレベル6の城砦でも攻城だな」

確かにこの同盟は強かった。同盟勢力値、盟員数共に2位同盟とは3倍、4倍の差をつけて1位に君臨していた。

他州ではその州で5、6の同盟で構成されており、人は疎らで一見纏まりが無さそうに見えるが、それは見た目だけ、自州の防衛時は協力する取り決めがなされていた。しかし暴君盟主の同盟は、別の意味で纏まりが無くなろうとしていた。

『同盟全員に連絡! 明日、朝8時に城砦レベル6を攻城する。要塞を建て、準備するように!!』

「この攻城が成功すればより一層我が同盟は強くなれる。俺が強ければ良いんだ! 盟員なんて俺が強くなるための土台でしかない。13州府を統一するまでこき使い、斬り捨ててもいい。俺だけが征服ガチャを引くんだ。安心しろ。副盟主のお前には征服ガチャの恩恵をやるよ」

「わかりました……」

連日連夜の急な攻城に盟員は疲れ、盟主に苦情のメールをいれていたが盟主は当然のように無視。

その皺寄せが副盟主に流れ、対応に追われた。

その頃、他州の盟主達は緊急会議を行っていた。

「荊州は遂に城砦レベル5を突破したか……他州に乗り込んで来るのも時間の問題。ここは協力して迎え討つのが良策と思えるのだが……」

 

荊州の隣、益州の盟主が他州に協力を要請するが、荊州から離れている盟主達はまだこの事態を楽観視していた。

「今はまだ地盤を固めるのが定石であろう。益州に援軍を出すにしろ、関所の突破は苦戦を強いられる。荊州の関所全てを見張り、要塞群が建ち始めてからでも遅くはないだろう」

荊州に面していない他6州の盟主達がこの提案に手を上げ、賛成多数で関所を見張ることで合意した。

「荊州に面していないからと楽観視しおって。益州が突破されれば明日は我が身。出過ぎた杭は早急に打つべきだと言うのに……」

益州の盟主の呟きは他州の盟主に届くことはなかった。

そして益州の盟主が危惧していた事が次の夜に起こった。

《益州全同盟陥落》

『全盟員へ連絡! 城砦レベル6、益州と荊州を結ぶ関所の突破ご苦労であった。そして益州の占領。これは天命で決まっていたに過ぎない。我らには休む暇など無い! すぐに剣を取り、馬に乗れ!! 直ぐに出発する!』

「…………」

「何を恐れている副盟主。流れは我が軍に来ているではないか。このまま涼州へ軍を進めれば盟員の資源も調達できるであろう」

「盟主殿。益州で我が同盟に入りたいと申していたプレイヤーはどうするのでしょうか?」

「そんな奴もいたな。あいつら剣を納めればいいものを我に刃を向けてきたではないか。洛陽の攻城が終わり次第斬るに決まっておろう。加入させるときはしっかり名前をメモっておけよ」

盟主のこの言葉をきっかけに、副盟主は全てを吹っ切る事ができた。

「わかりました……そして、涼州の関所は何時に?」

「明日の21時で問題無いだろ。盟員には我から伝える。お前も準備しておけよ」

こうして盟主が盟員に無理なメールを回したと同時に、副盟主もまた別宛にメールを流した。

益州が陥落して直ぐ、益州を除く他州の盟主達で再び緊急会議が行われていた。

「何をしておったのだ!! 荊州の関所を見張る事で合意したであろう! 何をしておったのだ!」

涼州の盟主が声を荒げ、他州の盟主に睨みを利かせた。

「貴様こそ現状把握出来ていないではないか。それは貴様も監視していなかったと同義であろう」

「それは…………」

「益州には申しはけないが、次の手を打つ必要があろう」

その時、会議に参加していた盟主全員に荊州の副盟主からメールが届いた。

『明日、21時に涼州の関所を攻城する。』

「なんだこのメールは!! このようなメールを流して荊州に何のメリットがある! 陽動作戦か!?」

「落ち着け! 涼州の盟主よ。今慌ててどうする」

「このような状態で落ち着いていられるか!! 明日には我が領地が落とされるのだぞ!」

「まー落ち着け。先のメール、嘘か誠かわからぬ。ただ無視は出来まい。そこでだ。今すぐに涼州と並州の関所を開通させようと思うのだが……勿論開通には涼州にも協力して貰う」

並州の提案に涼州は沈黙の後、恐る恐る口を開いた。

「並州が涼州の土地を狩らないのが条件だ」

「良かろう」

 

こうして、涼州と並州が協力して荊州の進行を阻止しようと動き出すのであった。

他州の盟主達は涼州と並州の結託で荊州の進行が止まると思ったが、事態は皆が思っている以上に深刻だった。

 

《涼州全同盟陥落》

 

「大儀であったぞ! 並州の盟主達よ! 我の提案によくぞ乗ってくれた」

 

荊州の暴君盟主は、盟員に攻城日時をメールした後、並州の盟主にもメールを流していたのだ。

 

『涼州の関所を突破せよ! 成果によっては我が同盟に迎え入れよう』と…………

 

「それでだ……並州に一つ問いたいのだが、なぜ涼州の関所を位とも簡単に突破出来たのだ?」

 

荊州の暴君君主が疑問を口にした。

 

「それは、そちらの副盟主殿が涼州への攻城時間を連絡して頂いたのが大きいかと……涼州の不安に漬け込んで関所の攻城を手伝わせたのです。既に荊州と並州が結束してるとも知らずに。笑いを堪えるので必死でしたよ」

 

「そうであったか! 流石我が参謀だ。我の意とを察して直ぐに実行できる。我が見込んだだけのことはあろう」

 

暴君盟主と並州盟主に頭を悩ませた参謀は、直ぐに次の一手を打つため、他州の盟主に再びメールを流した。

 

『並州が涼州を裏切り涼州陥落! 早急に対処せよ』

 

「それで……盟主殿……我々の戦果は合併するに至りましたか?」

 

恐る恐る並州盟主が訪ねたが、答えはあっさりしたものだった。

 

「いいであろう。ただ、先に並州に軍を進めねば合併も出来まい。関所を開門しておいてくれ」

 

「わかりました。直ぐに実行します」

 

無防備な関所を通って並州に軍を進めた暴君盟主は並州の同盟を加入させることもなく、滅ぼしていった。

 

《並州全同盟陥落》

 

「さて、荊州、益州、涼州、並州全てが我が手中に落ちた訳だがまだ半数以上の州が残っておる。まだ休む訳にはいかないのう。我が参謀よ」

 

並州を裏切った事など無かったかのように振る舞う暴君盟主に参謀は疑問を口にした。

 

「並州とは合併を合意していたはず。なぜ裏切ったのですか?」

 

「簡単な話だ。盟員枠にも限りがある。中途半端に数人加入させ反乱が起きるより、全てを斬り捨てる方が楽であろう」

 

罪悪感など微塵も感じていない暴君盟主の言動に諦めを込めて次の策を確認した。

 

「そして次は何処を攻めましょう?」

 

「次は幽州か冀州であろう。どちらかはまだ決めておらぬ。どちらでも一緒であろう。早いか遅いかの違いだ」

 

「それでは決まり次第連絡を!」

 

そう言い、副盟主は他州の盟主に再びメールを流した。

 

『次は幽州か冀州の関所を攻城する。全力で阻止せよ』

 

荊州の副盟主から2通のメールが回ってきた後、再び他州の合同会議が行われた。

 

副盟主が送ったメール内容はこうだ。

 

『並州が涼州を裏切り涼州陥落! 早急に対処せよ』

 

『次は幽州か冀州の関所を攻城する。全力で阻止せよ』

 

「並州の奴らめ……涼州を裏切り自州も陥落させられるとは……笑い話で済まされないぞ!」

 

今まで荊州とは距離があり、間の州が何とかしてくれると楽観視していた幽州と冀州に、付けが回ってきたのだ。

 

「終ったことを討論しても仕方あるまい。取り敢えず落ち着け! 荊州の副盟主からのメール、涼州陥落の事からこれは間違いなく信憑性があろう。どう言う意とでメールを流しているか分からぬが、こちら側着いていると捉えて良いと思うのだが……」

 

「それは我も同意しよう。他州の者も荊州の副盟主はこちら側に着いている認識で問題ないな?」

 

冀州のこの言葉に全員が頷いた。

 

「それでだ……幽州か冀州、どちらを攻略するかわからない現状で兵力を分散させるのは良くあるまい。幽州を捨てて冀州に兵力を集中させるのが良策と思えるのだが……」

 

冀州のこの言葉に幽州から待ったがかかった。

 

「冀州は我らに自国を捨てろと申すのか!!」

 

「結果的にはそうなるな……だが考えてもみろ。幽州に防衛戦を張るにせよ、時間的に我らしか援軍にいけまい。我が自国、冀州に防衛戦を張った場合、幽州、冀州、青州の3州が防衛戦に参加出来る。どちらが勝算が高いかは一目瞭然であろう。なに、地盤が整えば幽州奪還に協力しよう」

 

冀州の提案は最もな事もあり、幽州、青州はこの策に同意した。

 

「しかし、3州の合併だけでは不安が残る。徐州、揚州には早急に冀州へ向けて進軍してほしい。それでいいな?」

 

冀州の提案に悩んだ表情を見せたが、徐州と揚州は頷いた。

この2州が悩むのも仕方ない。暴君盟主からメールが届いていたのだ。

 

『徐州と揚州が協力し、青州、冀州の背後を取れ! さすれば州府を一つ授けよう』

 

「それでは本会議を終了する。各自速やかに動くように!」

 

会議が終わり、各州が散ったのを見届け、徐州と揚州は顔を見合せた。

 

「荊州からのメール。徐州はどう思う?」

 

「並州の一件があろう。信じる方は難しくないか?」

 

「確かにそうであるな……ここは冀州の提案に乗るべきか……」

 

こうして徐州と揚州は、荊州の提案を無視する事となった。

 

それから数日後、冀州の関所での攻防、徐州、揚州が冀州入りを果たした。

 

「なぜだ! なぜ冀州の関所が突破出来ぬ!!」

 

数日続いた攻防、徐州、揚州の裏切りに暴君盟主は苛立ちを覚えていた。

 

「相手は関所前で免戦バリアの防戦一方。このままでは我が軍は疲弊するばかり、現にあなた様も疲れているではありませんか……ここは私が見張っております。少し休んできては?」

 

副盟主は今まで温めに温めぬいた策を実行するために、盟主に離席を促した。

 

「我の天下統一を邪魔しおって……何か進展があったら直ぐに連絡するのだぞ!!」

 

そうして、暴君盟主は一時的に席を外した。

 

「そろそろ頃合いでしょう……」

 

副盟主は徐州、揚州にメールを流した。

 

『この暴君盟主を討つ。徐州と揚州が手を取り、荊州の関所を突破せよ! 尚、隠密に動く必要が有るため、2州の盟主は荊州へ本城を移し、短時間でこやつを陥落させる。我が軍は既に準備は整っている。迅速な行動で各州に平和をもたらそう。(899,383)』

 

荊州の協力もあり、荊州と揚州の関所の突破、2州盟主の本城移転に時間がかからなかった。

 

「徐州、揚州には感謝しよう」

 

副盟主は2州の盟主に対して頭を下げた。

 

「何をおっしゃいますか。我らは平和のため、協力したまで。こちらこそ感謝しなくてはいけません」

 

「そのように言って頂けるならこれ以上言うことはあるまい。この戦争を終わらせよう! 暴君盟主の主城に突撃!!」

 

副盟主の号令で、徐州、揚州の盟主は暴君盟主目掛けて進軍した。

副盟主率いる親衛隊も一斉に進軍を開始した…………

隣に控える徐州、揚州盟主の主城目掛けて…………

 

「貴様! 何をしておる!!」

 

《揚州盟主陥落》

 

「貴様! あの盟主を裏切っているのではないのか!?」

 

「なぜ私が盟主を裏切るのですか……あの方に着いていけば天下統一できるではありませんか……あなた方はこう思っていたのではありませんか? 荊州の副盟主は盟主の対応に疲れ、裏切りを模索していると……」

 

「貴様ーーーー!!」

 

「嘘と言うのは1度しかつけないのですよ……その嘘をここぞと言う時に持ってくるのが参謀としての責務。先ほど言った、戦争を終らせると言うのは本当ですよ。あなた達が着けた足場を使い、後ろから残り3州を斬ります…………嘘は1度しかつけないですからね」

 

「おのれーーーー!!」

 

《徐州盟主陥落》

 

「はぁーー、本当に入る同盟を間違えたか……」

 

2州を陥落させた後の、副盟主の言葉に暴君盟主は答えた。

 

「お前、最初の頃にも入る同盟を間違えたと言っておったの」

 

「盟主殿、戻られていたのですね。最初に言ったあの言葉、聞かれてましたか。聞いていて良く私を斬りませんでしたね」

 

副盟主の疑問に暴君盟主は不敵な笑みを浮かべながら答えた。

 

「あの時のお前を斬れる訳なかろう……なぜならあの時のお前…………笑っておったではないか」

 

「顔に出てましたか……ばれては参謀失格ですね。しかし、入る同盟を間違えたと思っているのは本当ですよ。今回、天下統一を成せても次のシーズンでは難しいでしょう。今季の盟員の不満が後押しとなり、盟員が集まるかどうか……」

 

「そんなの俺には関係ない。そこを何とかするのが参謀、お前の仕事だろ。よし、天下統一を目指し出陣するぞ!」

 

「わかりました。行きましょう!」

 

こうして、徐州と揚州が冀州入りした足場を使い背後を取った荊州は残り3州を滅ぼすのに時間はかからなかった。

 

無事、天下統一を成した暴君盟主は次に控える修羅の道を参謀と向かうのであった。