ラストアタック―――――
それは盾と矛の思惑が1秒単位で混ざり合う刹那である。
時にラストアタックに救われ、時にラストアタックに泣きながらこの世界を生きてきた主公は多いのではないだろうか。
ご存知かと思うがラストアタックは関所を挟んで攻防を繰り広げる際に、攻め手が減らした関所の耐久値を、守り手が最後攻撃を加え0にすることにより、自同盟の所有関所とする大三国志史上最大のごっつぁん戦法である。
このゲームが誕生してからというもの、どのシーズンでも、どのサーバーでも必ずラストアタックは存在してきた。
そして勿論筆者にも忘れ得ないラストアタックがある。
それは2期の終盤、とある同盟にいた私は大苦戦の最中にいた。
青州、冀州から始まった長い撤退戦は兗州、司隷へと及び、最後は延津、虎牢関、潼関の3関所から3同盟に攻撃を受ける壮絶な関所攻防戦に発展していた。
既に虎牢関の1ヶ所を破られていた我々はこれ以上他の関所が破られ司隷への侵入を許す訳にはいかず、またそれを許すことは完全なるシーズンの終了を意味した。(と言ってもその時点で超大劣勢であったことは申し添えておく)
冬のある夜のことである。
延津の最前線にある要塞から大きな鳥の鳴き声が轟いた。
仕事をしていた私は傍らのiPadに目を向ける。付けっぱなしの大三国志の画面から赤い赤い半円の花火が延津右の関所に向かっていた。
遂にその時がきたのである。
間髪入れず、同盟内に集結要請の一斉メールが飛ぶ。同盟チャットのスピードがにわかに早くなる。
程なくして延津下を埋め尽くす自軍の要塞にも青い矢印が覆った。
司隷の関所レベルは最大の9。今ではあっというまに抜き去る同盟も増えたが、
当時2期の時点では、攻める時は辛く守る際にはとてつもなく強力にだった。しかし無情にも守軍は0になり関所は耐久値削りに突入する。
しかしそこから12万という耐久値は若干の時間稼ぎになる。耐久値がじわじわと減っていく中、続々と仲間の部隊が要塞へと集まってきた。
そのタイミングで再度全体メール、ラストアタックを狙うからまだ部隊を出さないでという連絡だ。
同時刻には元々破られていた虎牢関にも赤い矢印が殺到していた。こちらは関所前に分城を置き、200枚防守を積んでいたため今夜はなんとか持つだろうという確信があった。
しかし延津関所を破られれば延津にも戦力も割かなければならない。もはやその余裕は戦力的にも精神的にも無い。
延津に戦力を割くことを防ぐには、なんとしてもカウンターのラストアタックを成功させ明日に繋ぐ必要があるのだ。
一方同チャでは1分ごとの耐久減少値を計算し、自軍の関所着弾をあわせようとしていた。
慎重に見定め、耐久値が2万を切ったタイミングで全体メールで着弾の時間を告げる。足の遅い部隊は一足先に部隊を出撃させていく。
しかしそううまくいくはずがない。
出撃命令から2分を過ぎたタイミングで相手方の攻撃が止まった。
敵もさるもの、こちらのカウンターを読み、時間をずらすことで対策をしてきたのだ。
敵の攻撃が止まったのを受け、再び嵐のように飛ぶ全体メール。今度は撤退が間に合う部隊は一度戻すようにとのメールだ。
2期の頃はまだ圧倒的に関所戦の経験が少なかったこともあり、みんなが手探りだった。
焦っているのはこちらだけではない。相手方もこちらの動きを見極めているはず。
改めて向こうの攻撃が始まり着弾を揃えられた時点でこちらもGoサインを出す。
最前は尽くした。後は運を味方に女神が微笑むのを待つしかなかった。
3000...
2000...
1000...
一瞬白くなって横から文字が来たら勝ち
一瞬白くなって横から文字が来たら勝ち
一瞬白くなって横から文字が来たら勝ち
そう祈るように何度も心で呟く。
耐久値が0に近づいた時。その緊張感に耐えきれず思わず目を瞑った――――
恐る恐る目を開けると、携帯で動いていた部隊が一瞬固まり、間髪入れず、白、そして画面を覆う攻城成功を知らせる文字。
「よっしゃああああああ!!!!」
良い大人なのに大きい声が出た。
同チャでは仲間達の歓声が今日1番の速さで流れる。
全チャでは延津を攻城していた敵対同盟が祝福の言葉を述べてくれる、大人の対応だ。
大劣勢だったシーズンで勝ち取った小さな勝利。
それは戦況としては取るに足らないような小さい勝利だったが2年たった今でも忘れられない勝利の1つだった。
ラストアタック
それは盾と矛の思惑が1秒単位で混ざり合う刹那。
時にラストアタックに救われ、時にラストアタックに泣きながら今日もどこかでラストアタックはおきている。